DX内製化実践ブログ

DXや内製化に役立つ情報を提供します!(提供:株式会社アルネッツ)

外部委託から内製へのシフト:IT部門が取るべき戦略的アプローチ

デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、「DXのカギはシステム内製化である」という考え方が広まっています。経済産業省が2018年に公表したDXレポートでは、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すると共に、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しており、この実現においてIT部門が大きな役割を果たす必要があります。

なぜ今、内製化なのか

VUCAの時代において、顧客や社会のニーズは刻々と変化しており、従来の請負契約・ウォーターフォール型開発では対応が難しくなっています。また、「2025年の崖」問題として、レガシーシステムブラックボックス化がDX推進の障壁となっており、これを解消する有効な手段の一つとして内製化が注目されています。

1990年代の外部委託やアウトソース、2010年代の内製化はいずれも時代背景や技術と事業の関係などの面で必然性があり、今日の内製化は多くの企業に欠かせない取り組みとなっています。

内製化の現状

IDC Japanが2024年5月に実施した調査によると、国内の従業員300人以上のユーザー企業において、IT業務を内製で対応する企業は多く、特に業務プロセスの改善やデータ分析、IT/DX戦略の策定など、企業運営やDXに密接に関係するIT業務について内製化の傾向が強いことが分かりました。

「現在、IT部門の業務範囲は従来の構築・開発・運用だけでなく、経営や事業に近いタスクへと拡大している。一方、日本全体の労働力不足は解消される見込みはない。こうした中、多くの企業がIT業務の内製化を検討している」とIDCは分析しています。

内製と外注の使い分け戦略

内製化を考える上では、システムの領域を3つに区切ると分かりやすくなります。なぜなら、システムの領域により、内製化との相性は変わってくるからです。

1. 基幹系システム(SoR:System of Record)

ERPや業務パッケージシステムを導入する場合は、そのパッケージを持っているベンダーに「外注」するのが最適です。わざわざ内製でスクラッチ開発して、費用と時間を大幅に使うよりも、既製品を導入することでショートカットできるからです。

基幹業務は規模が大きく、比較的要件も固めやすいため「ウォーターフォール開発」が向いています。その場合、開発部分は「一括請負契約」にすることで、システムの納品が約束されます。

2. サービス系システム(SoE:System of Engagement)

顧客に直接サービスを提供するシステム、あるいは間接的にサービスに繋がるシステムや現場の生産性に密接に関わるシステムの場合、要件がカチッと決まっているわけではありません。試行錯誤しながらシステムを育てていくため「アジャイル開発」に向いています。

このアジャイル開発は「内製」と相性がいいです。社員の方が現場と密着してコミュニケーションをとり、開発していくことができるからです。

この領域は、ベンダーとの協働領域です。最初はベンダー比率を高くして、徐々に内製にシフトしていくことが現実的だと考えられます。

3. 上記以外のツールの導入・活用・開発

BIツールの導入やレポート・ダッシュボードの構築、AIツールの導入と分析・自動化機能の構築、RPAによる業務自動化、エクセルマクロによる集計・計算の自動化などは「内製」に向いています[^5]。

この領域の内製化は、従来から情シスで細々とやってきている企業が多いと思われます。高度なプログラミング技術がなくても、実装しやすいからです。

内製化成功のための戦略

専門チームの結成

システム内製化を成功させるための第一歩は、内製化の業務に特化した専門チームの結成です。内製化には高度な技術力と専門知識が求められるため、日常業務の片手間でプロジェクトを進めるのではなく、専任の部隊を結成することをおすすめします。

既存のIT部門に加えて内製化専任のチームを設けることで、プロジェクトの効率・精度を高めることが可能になります。

「完全内製」にこだわらない柔軟なアプローチ

内製化の戦略を立てる際、「完全内製」にこだわるのではなく、柔軟なアプローチを取ることが重要です。

ITRの分析によれば、IT部門のミッションを再定義することが重要です。「IT部門のコア業務は、アプリケーション構築によって、DX、革新的ビジネス、業務変革/改善に貢献すること。これは外製では実現困難で、内製を自社およびIT部門の重要業務と捉えるべき」としています。

さらに内製を進める上では、業務部門とIT部門の密接な連携により、「ビジネス創生/変革/改善、アプリケーション構築、アプリケーション運用のサイクルを短期で繰り返す『BizDevOps』が重要となる」と説いています。

外注と内製の共存

外注と内製がうまく共存できる環境を作ることが重要です。IT人材確保・育成の中長期計画を明確にし、実行していくこと。その領域を明確にすること。すると、IT人材の募集要件もみえてきます。

外注をうまく使うことが、余力を生み出し、内製力を高めるといえます。

内製化の成功事例

キリンホールディングス

飲料品の開発・販売を行っているキリンホールディングスでは、レガシーシステム(老朽化した古いシステム)からの脱却やデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目的として、システム内製化に積極的に取り組んでいます。

同社では、はじめにアプリケーション開発の領域を内製化の対象に選び、組織全体で大規模なプロジェクトを立ち上げました。社員のナレッジ向上を実現するために敢えてプログラミング言語による開発を選択し、得られたノウハウを社内へ蓄積できる仕組みを構築したのです。

その結果、アプリケーション開発の内製化に成功しただけでなく、経済産業省の「DX注目企業2022」に選定されるという快挙を成し遂げました。

株式会社エディオン

株式会社エディオンは店舗システム・会員情報・物流・在庫管理・分析系システムなど12種類の基幹システムをクラウド環境に全面移行し、安定稼働を実現しています。

クラウド移行と内製化を並行して進め、以前ならITベンダーに依頼していた案件を、「現在クラウドで利用できる技術だとどうやればいいか」と全員で考えられるようになりました。これにより通常なら1か月~2か月かかるような作業が数日程度で完了するほどの開発速度を達成しています。

株式会社アイセイ薬局

全国に約400店舗の調剤薬局を経営するアイセイ薬局では、紙ベースのアナログな申請・承認業務が根付いていた状況から、生産性向上のためのデジタル化を模索していました。

手始めに、人事関連の全ての申請・届出をワークフローシステムに乗せるべく、システム選定をスタート。高機能なワークフローを実現できるエンタープライズ・ローコードプラットフォームのintra-martを採用しました。

導入時に、情報システム部門がベンダーから教授された開発スキルなどを、人事部門へも徐々に伝授し、社内の体制を整えました。さらに、総務部や研修部が使用するワークフローを情報システム部門が構築。最終的には社内の紙による申請・承認をすべてデジタル化することを目指し、内製化を進めています。

まとめ

内製と外注はどの企業においてもどちらか一辺倒ではなく、その領域によって、また状況に応じて、バランスよく使い分けていくものです。内製に力を入れている企業であっても、定型業務にはパッケージシステムを入れていたり、専門領域には専門家に頼っていたりします。

企業ITの内製化は、単なるコスト削減策ではなく、企業の競争力強化に直結する重要な経営戦略です。ローコード開発ツールやBRMSの活用により、技術者不足の課題を克服し、効率的な内製化を実現することが可能となっています。

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